宮﨑 道さん(北陸)

今年は少し趣向を変えて、知人と二人、向かい合って加能ガニを囲んだ。
最初は「どう食べる?」「まず鍋?」などと賑やかだったのに、いざ蟹に手を伸ばした瞬間、会話がぴたりと止まる。無言。ひたすら無言。聞こえるのは殻を割る音と、湯気の立つ鍋の音だけ。これはそう、「沈黙」である。
カウンセリングも沈黙が訪れる。話さなければならない場ではない。無理に言葉を探さなくてもいい。ただ安全な空間で、相手がそこにいる。その静けさの中で人は少しずつ自分の本音に触れていく。
目の前の蟹に集中しているこの無言の時間も驚くほどそれに似ていた。
向かい合っているのに、急かされない。評価もされない。ただ、各自が自分と向き合っている。

北陸の人の距離感もこんな感じだ。

近すぎず、踏み込みすぎず、でも決して冷たくはない。
雪国の長い冬の中で育まれた、静かな思いやり。産業カウンセラーとして日々感じるが、この土地の空気そのものが、すでに“心を整える装置”のようでもある。
そして今年、能登は大きな試練の中にある。復興はまだ道半ばだ。
だからこそ今年の蟹は、ただのご馳走ではなく、「食べる支援」にもなる。加能ガニを選ぶことが、小さくても確かな応援になる。
中部の皆さんぜひ能登へ。二人で向かい合って、無言で蟹を食べてみてほしい。
気づけば心の殻まで少し柔らかくなって、「あ、今ちょっと元気やな」と思えるはずだ。

なお無言が長すぎても気まずさは発生しない。なぜなら全員蟹に必死だからである。

※画像はイメージです。