前回は企業内でのメンタルヘルス支援の話題でしたが、今回の特集は、公的機関のリワーク支援についてお届けします。8月11日、海の日に行われた三重の会員研修を通して、講師の横顔も交えてお伝えできればと思います。
うつ病等で休職されている方への職場復帰支援として、平成17年10月より全国の地域障害者職業センターで提供されているリワーク支援。地域障害者職業センターは、厚生労働省管轄の独立行政法人として障害者の雇用促進や職場定着に対応していますが、在職休職者が増える中、企業の精神障害者の雇用が進まないことや、年間3万人超えの自殺者が継続していることなどを背景に、リワーク支援がスタートしました。「リワーク」とは、「Return to Work」の造語だそうです。
会員研修「メンタル不調者の復職支援における効果と課題」を受講して
講師の川村浩樹氏は、三重県のリワーク支援立ち上げにかかわられたパイオニア的な方で、研修のテーマは、メンタル不調者の円滑な職場復帰と再発防止を中心としたお話でした。幅広い経験と知識に裏付けされた、わかりやすく丁寧な解説と各支援機関の役割や特色をも含めた内容は、具体的で実践的なものでした。
利用者本人・事業所・医療機関・支援機関の役割分担がどこまでなのか、利用者や支援機関にとって何を大事にしなければならないかなど、具体的な解説と支援のポイントについて、タイムリーな情報・話題提供もいただき、2時間がアッという間に過ぎてしまいました。
特にうつ病等を罹患された利用者に必要なリワーク支援にかかる説明は、相談現場にかかわる私たち産業カウンセラーにとって必要なかかわり方のポイントや支援者側の視点を踏まえたもので、リワーク支援の現状把握と理解につながる充実した内容でした。
★うつ病発症とストレスの関係、回復のためには
脳が休まらない不眠が一番の問題で、神経伝達物質が不足して適切な情報伝達ができなくなると、うつ病発症の大きな要因になるそうです。そのメカニズムやさまざまな要因、ストレスの受け止め方には個人差があること、ストレスが高じればどんな人でもうつ病になり得ることを解説いただきました。発症や再発防止には、ストレスを減らし、対処能力を上げるのが基本とのことです。ストレス耐性は、年齢、環境要因により個人差があり、自身のセルフモニタリングやマネンジメントを行うとある程度防止できること、うつ病の治療・対応の原則・生活リズム、体力を回復させ、再発をしないためにはなど、様々な角度からの話題提供も多く含まれていました。
★リワーク支援の開始には
タイミングが重要なこと、症状が安定し、回復期にあるのか、主治医の指示があり、生活リズムは整っているのか、日中活動に取り組める段階を確認し、復職予定日を踏まえ計画的に支援をスタートする、本人が休職中であり、復職に向けた活動が可能な段階であることに加え、本人・主治医・事業主の三者同意が必要なことにも触れられていました。
★現在のリワーク支援の現状や傾向は
復職支援が長引いている、復帰後の職場適応にも個人差がある、支援内容は時代とともに変化している、本人にとっての焦る気持ちへの理解を大切にする、回復期には焦りなのか意欲なのかの判断が大切であることなど、相談内容を踏まえたエピソードも大変参考になりました。
川村氏の温かく親しみやすいお人柄の現れたお話から、実際の相談現場で実践的に活かすことにつながる多くのヒントをいただきました。この場をお借りして厚くお礼申し上げます。(大富久子)
——————————————————————————————————————–
講師に聞く
研修後、講師に広報部からミニインタビューをさせていただきました。