退職後に独立した青木さんに資格の活かし方や独立について聞きました。
「産業カウンセラーの資格を取ったものの、仕事につながらない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
2024年度の会員アンケートでは、「資格を取ってよかった」という一方で、「産業カウンセラーの資格を活かせる場所を見つけられない」という声も多く見られました。
今回は退職してから独立し、カウンセラーをされている青木さんに、どのように資格を活かして仕事をしているのか、お話を伺いました。
(インタビュアー:広報部 金山・城)
1 青木さんのプロフィール
画像・本文引用:https://counseling1.co.jp/aichi-2/toru-aoki/
・産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会)
・心理カウンセラー(日本メンタルヘルス協会の公認)
・ビジネスキャリア検定 労務管理2級、人事・人材開発2級(中央能力職業開発協会)
・KCS認定カウンセラー (呉竹カウンセラースクール)
【好きな事】
友人・旧友・恩人などと語りあうこと、心理学などを学ぶこと、整理整頓(清掃は苦手)
2 「カウンセラーとして独立する」という覚悟
会員アンケートでは、「資格を取って良かった」というご意見がある一方で、「産業カウンセラーの資格を活かせる場所を見つけられない」という声も多く見られました。
「学び直しをしたい」と感じる会員が多いなか「投資コストを回収したい」と考える方も多いようです。
青木さんは独立して活動しているカウンセラーですが、実際独立して働くのは選択肢としてありなのでしょうか。
独立カウンセラーの道は、一定の覚悟を持ってやるっていうことを考えればそれはありだと思います。
ただ、ポンと独立できるかどうかは、個人や家庭、経済的な事情もあり、一概に独立することが正解とは言い切れません。その人にとって何が正解か考える必要があると思います。
産業カウンセラーは「仕事の悩み以外は一切聞きません」っていうカウンセラーではないですからね。働く人が抱える悩みは仕事だけじゃなくて、子育て、夫婦関係、将来のこと、性格のこともそう。
だから、産業カウンセラーは働く人だけでなくこれから働くかもしれない人も含めて、誰しも対象にできる資格だと思ってます。
ただその資格ですごく高収入を得られるかっていうと、一般的にはあんまりないかなと。やれないっていうことではないと思いますが、今の世の中では難しそうなのでちゃんと見極めないといけないと思います。
3 独立しようと思ったタイミング
カウンセラーで生計を立てるっていう道はなくはないし、その覚悟を持ったとしても、独立をしようと決意するタイミングはやっぱりありますよね。
私の場合は会社を辞めるタイミングでした。子供が独立した後で、家庭の状態も経済的な負担も軽くなった状態で。
少し収入が落ちても耐えられる体制ができているか、自分の資産だとか、そういったことも全部把握して、このぐらいの収入を得ていこうという計画がたてられたことが1つベースにあります。
私自身はしばらく収入は落ちても、見通しが立てられて、経済的に耐えられる状態っていうのを中長期見据られていたことで、独立に踏み出せました。
4 独立してカウンセラーになろうと思った理由
今の時代、「終身雇用」は常識ではなくなっています。ただ、キャリアアップで転職や独立をしようと思っても、いざ行動に移すのは難しいですよね。
58歳の私としては終身雇用が当たり前でした。転職する選択肢は頭にはあるけれども、現実的ではない。会社への不満が募るときもありますが、基本は会社に留まるという考えがベースにあって。
だから、私の場合、転職するっていうと何かトラブルがあった、どうしようもない事情があったというケースが思い浮かびます。
私が最初に転職を真剣に考えたのは、会社が経営統合をして希望退職を募ったタイミングでした。それが40代前半だったんですけど。
自分の会社が別の会社になっちゃうみたいな。そういうことがあると、ずっと勤め上げるっていうのが、どうかなって揺らぎました。
それから10年くらい後、52歳のときに会社が再び希望退職を募ったときに、転職を前提にして退職を決意したんです。
——青木さんが独立して、カウンセラーになろうと思ったのはどうしてですか?
実は辞めるときはまだカウンセラーになるとは決めていませんでした。もともと人事や労働組合の経験もあり、違う団体さんでカウンセリングの勉強をしっかりして、公認もいただいていました。
キャリアカウンセラーさんに相談をしたときに、「カウンセラーがもともとやりたかったよな」っていうことを思い出したっていう感じだったんですよね。
会社にいたころは、労働組合の書記長をしていました。組合員さんの相談にも乗っていました。お金の問題で悲惨な状態になっておられた方もみえて。
そういった方と何度か相談を受けたんですけれど、そのときは、うまく聴けてないという感じがして。
「組合員さんは納得していない」という風に感じたんですね。そんなときに、心理学やカウンセリングについて学び始めたんです。
そのときは15年前で、当時は別の団体で公認をいただいたんですが。会社を辞めた後にもう1回学び直したいと思ったとき、産業カウンセラーの資格を取ったという感じでした。
5 傾聴を仕事にするのではなく「基礎スキル」だと考えることも選択肢
——「資格を取る=就職に役立つ→収入アップ」と、世の中の多くの人は捉えています。キャリアコンサルタントの資格であれば、資格を持ってないとできない仕事とかあるのも事実です。ただ産業カウンセラーの資格があるから仕事が舞い込んでくるかって言うと、そうでもない、という現実もあります。
「仕事にしよう」「生計を立てよう」とすると、逼迫した思いから焦りも生まれます。仕事ではなく、「ライフワーク」と捉えると選択の幅が広がって、「カウンセラーで身を立てて、生計を回さなきゃ」と思わずに済むかもしれません。
「多少のお金で、十分っていうぐらいのスタンスで一生続けていく」。そんな自分の活動の柱として持っておくと、いいものだなっていうふうに思ったことはあります。
そのうちいい年になってきて、別にお金のことはもういいと、と言えたらいいんですけど。「相談乗るよ、こんなおじいちゃんでよければ」みたいな。
それなりにスキルも経験も積んできたので、そういったライフワークも将来的にはイメージしていたりはします。
——基礎スキルっていう位置づけで傾聴スキルをみると、今の世の中だからこそ必要なスキルですよね。いずれ組織の中で部下を持つようになる中間管理職になっていくと、傾聴は必要になってきます。
そうですよね。ライフワークっていう見方は重要だと思います。20代の人ってもうそもそも終身雇用がない前提じゃないですか。終身いるつもりだとしても、そうは簡単にいかない。
そう考えると 1つのスキルとして、傾聴を基礎スキルとして持つっていうのは。大きいと思いますよね。
「産業カウンセラーで商売をする」とか「産業カウンセラーだからカウンセリングができます」ということではなく。傾聴というスキルをベースで持っているっていうのは、若い人たちには特に大きいのかもしれないです。
傾聴スキルがあれば、職場や公的な場での人との付き合い方が変わってきます。「こういう場面で、こう行動すると、相手はよい反応してくれる」「こういう行動をすると、相手はよくない反応しかしてくれない」ということを実感としても、理論としても、理解することは大きな意味があります。
取材を終えて
城:私自身も個人事業主として活動しており、カウンセラーとしても活動していますが、独立して活動するというのは、難しいと思うことが多々ありました。
「カウンセラーとしてどうしても仕事をしなければいけないのか?」「カウンセラーじゃない形で傾聴を活かす方法はないのか」今回青木さんとのお話しの中でこのようなことを見つめ直すきっかけになったと思います。
金山:「傾聴を基礎スキルと位置づけ人生のライフワークとして傾聴を活かす」というお話は、単に産業カウンセラーという資格を職業として捉えるのではなく、より広い視座で活かせるヒントになるかもしれません。


