近年、パーソナルトレーニングを受ける人が増えています。身体や見た目の変化だけでなく、表情が明るくなり、考え方まで前向きになった姿を目にすることも少なくありません。

カウンセラーとして人の心に向き合う中で、その変化のプロセスに共通点を感じることがありました。一人きりでの変容は難しくても、伴走者がいることが変化の後押しとなるのかもしれません。

今回は、静岡市で複数の事業を展開する経営者であり、パーソナルトレーナーでもある高川和也さんにお話を伺いました。

【プロフィール】
高川 和也 さん

福岡県出身。製薬会社の営業職に従事する傍ら、2019年よりパーソナルトレーナーとしての活動を開始。2022年に会社を退職し独立。現在は、パーソナルトレーニングジムの他に、グループフィットネスジム、オーダースーツ店など、複数の事業を展開している。

漠然とした、社長になる夢

僕はもともと製薬会社で営業職として働いていました。就職活動をしていた頃から、いつか経営者になりたいという思いがありましたが、具体的にどのような事業をするかについては特にイメージしていませんでした。何をやるかよりも、「社長」というふわっとした夢でしたね。

転機は2018年頃、働き方改革によって世間は副業ブームとなり、自分も何か始めたいと考えました。その足がかりに、コーチングを受け始めたのです。もともと明確なビジョンがなかったため、さまざまな可能性を考えました。自分がコーチになってコーチングを副業にすることも考え、学んだりもしました。「自分は何をしたいのか」を模索する中で、もともと好きだった「トレーニング」を軸に置いていくようになりました。

答えをもらうのではなく、視点を変える体験

コーチングで得たのは、コーチに問題を解決してもらうのではなく、自分の見方や視点をどんどん変えていく体験でした。たとえば、将来の自分の視点から今を眺め直すような問いかけをすると、同じ悩みがまったく違って見えることがあります。それは、自分の脳に加えて、コーチの脳を使わせてもらうような感覚でもありました。一人で考えていると堂々巡りになることも、誰かと一緒に考えることで新しい道筋が見えたりします。

会社員として働きながら副業でトレーナーを始めてからも、コーチングは継続して受けていました。副業で会社員程の収入を得られているわけではなかったので、会社を辞めることに不安を感じていたのです。そんなとき、思い切って挑戦したのがパラグライダーでした。実際に高い所に行って、想像ではなく現実的に視点を変えてみたいと思いました。

パラグライダーって想像しただけで怖いですよね。僕は怖かったです。でも、後ろにインストラクターが付いてくれると、不思議と安心できました。そのとき、独立も同じかもしれないと思いました。一人で飛ぶのは怖い。しかし、経験のある人と一緒なら飛べる。独立も同じように、脱サラ経験者や経営が得意な人が周囲にいてくれれば怖くないんだと確信しました。それで、会社を辞める決断をしました。

専門家として、お客さんに伴走する
僕のお客さんは経営者の方が多いです。彼らはタイムパフォーマンスやコストパフォーマンスにシビアなこともあり、体づくりは僕に丸投げしてしまいたいのです。トレーナーは士業に近い存在だと思っています。専門家として、必要なことを整理して提供しながら、お客さんと一緒に目標まで進みます。お客さんは自分の体づくりのために何をどのくらい実施したら良いのか、自分自身で調べることもできます。しかし、それには時間と労力がかかりますし、実行し続けるのも難しい。信頼できる伴走者がいることで実現可能性が高まります。

製薬会社での営業経験も、今の仕事に生きています。医師のような専門性の高いお客様と向き合い、納得していただくには、知識や専門性だけでは歯が立ちません。でも、「このことはコイツに聞いて大丈夫」と信頼を得る必要があります。そのために、言葉の裏にある意図や感情を読み取る力が鍛えられました。今、相手が必要としているものが何かを感じとりながら関わる。それが“伴走”の質を決めると思っています。もしかしたら、カウンセラーの方の「傾聴」に似ているかもしれませんね。

すべてのお客さんが順調に目標達成できるわけではなく、途中で挫折する方もいます。モチベーションを保つのは大きな課題で、その対策として遺伝子検査の導入を考えています。「自分にはこの方法が合っている」というエビデンスがあることで、目標に向かい続ける意欲につながると思うからです。体づくりの方法はインターネット上にいくらでも情報があり、その通り実行すれば結果は出ます。しかし、たとえば鶏むね肉を食べ続けるのは、やはり簡単ではありませんよね(笑)。ゴールを目指すうえで、今の自分の状態を理解してくれる人の存在は、大きな納得を与えてくれます。信頼できる伴走者がいることで、次の一歩を踏み出し続けられるのだと思います。

【あとがき】
高川さんの話から浮かび上がってきたのは、「伴走者」の存在の重要性でした。それは、トレーニングに限らず、経営や人生の選択、そしてカウンセリングにも共通するものだと感じました。

人は、一人では視野が狭くなり、迷いの中で立ち止まってしまいます。しかし、信頼できる伴走者がいることで、見える景色が変わり、次の一歩を踏み出せます。

異業種で活躍する経営者でありトレーナーである高川さんのお話を通じ、私たちカウンセラーが行う支援とは何か、その意味をあらためて感じさせてもらえました。

◆トレーニングを体験させてもらいました